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海に還ろう 
海に還ろう
海に還ろう

金さんの描く4歳の勇作&青海(特に青海のくりくりお目目)に打ち抜かれた……はぁかわいいー。いつまででも見ていられる。
この絵を見ると、お互い4歳のときから好きだったっていうのに妙に納得します。魂がひとつ。だから別れない、別れられない。

13歳のときの事件……うおーわたしはこういうのはホントに苦手なんだよぉ(涙)初めてはやっぱり好きな子とさせてあげたいじゃないかー!<超保護者目線。でも2人は強かったね。うん、勇作の健康で大きな精神に涙した。

神社というのは独特の雰囲気で、その神秘性が剛さんの筆力で持って実に魅力的に描かれていました。BL嵌りかけの頃、多作=有名なんだろうと思って剛さん作品を読んだのですが(5冊ほど)ことごとく合わず、それ以来初めて読んだ作品がこれで良かった。ていうか今まで読んだ作品は全てB級だったということか…(笑)
 
『海に還ろう』 
PING:
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海に還ろう
 剛しいら/金ひかる
  雄飛アイノベルズ 2006.04
勇ましく強く、男らしいことが男の美徳とされる海辺の町で育った幼馴染みの青海と勇作。毎年行なわれる海神神社の祭は近隣でも有名で、輿に運ばれた稚児役が待つ沖の小島へ、御霊(ガラス玉)を手にするために男達が競い合って泳ぐ、勇壮で神秘的な祭だ。男達にとって、御霊を勝ち取ることはこの上ない名誉なのだ。
青海は、町の網元の息子である勇作と友情以上の情を通わせていたが、東京の医大学進学のため町を離れた。以来ほとんど帰郷せずいたのだが、十三歳のときに稚児役を務めた青海は、その十年後に選ばれた稚児役の世話をする介添え役をする慣わしのために、三年ぶりにこの町に戻ってきた。忌まわしい記憶の残るこの町へ…。
剛さんの新刊は秋月の好きな神事・民間伝承もの。日本の神話や民間伝承って、じつはかなりエロティックで妄想ふくらむ領域です。て、べつにそんな邪(よこしま)な目でいつも見ているわけではありませんが。
もともと信仰というものから、性は切っても切り離せない重要な因子です。性のシンボルそのものを崇める信仰もありますし、豊穣と多産、子孫繁栄は生み出され増えていくという面では似通っています。ですから、”神事”がこういうお話(BL)に登場すると、稚児という存在からしてエロティックなわけで。そういう見方が偏っているとは判っていても、止められるものじゃございません。
また、伝統祭祀と並んで、十三歳から二十三歳までの男たちが祭前の一定期間、生活を共にし連帯感を深める「若者宿」(若衆宿)のシステムも機能していて、これもまた個人的にかなりそそられる設定です。
しかしこの作品は、性そのものが祭と関わりあっているというわけではなく、その裏側で起きてしまった事故であるというところが、剛さんらしいと思えました。この話を徹頭徹尾貫いているのが、”男らしさ”であり男達の連帯感です。この、現代の日本ではすっかり古臭くなり、今時めったに”これぞ男の中の男!”という人物も生まれなくなった男らしさの文化は、それでもやはり格好のよい、憧憬めいた気持ちを抱かせるもので。そこが剛さんの描き出す”男気”の世界なわけなんですが、そんな健全な空気のなかで、いくら神事という非日常でのこととはいえ、稚児役を犯すことが祭に最初から組み込まれていては、そぐわない。
いきなりねたばれしましたが、青海は十三歳のときに稚児役をやり遂げた直後、見知らぬ男達に乱暴されました。しかし、その行為の残酷さは物語っても、悲劇らしさは強調されない。青海は稚児役を務めたことで、以降、男達に交じって海を渡り、御霊を競う資格を失ってしまった。つまり、御霊を手にして”本当の男”になる機会を失ってしまったということです。青海を守り、また祭で御霊を手にすることで、男らしさを存分に見につけていくことのできる勇作とは違い、青海にはもう”本当の男”になることすらできない。
四歳のとき父を亡くしてこの町にやってきた青海は元来よそ者で、勇ましい町の男達の中でその美しさは異質だった。どんなに父親や母親譲りの美しい顔をしていても、人よりもよく勉強ができても、男の子はそれを誇れない、そんな町。今の時代に生きていると、そんな閉鎖的な、時代遅れな、と思うけれども、じっさいにまだこういう考え方は地方には残っているでしょう。近所の嫁や子どものちょっとした醜聞が、あっというまに広がるような町はあるはずです。
そんな古臭い気質を、しかし一刀両断にすることもなく、話は進んでいく。悲劇性がないと書いたのは、青海がこの酷い出来事を通して、人間的・精神的に成長する姿が書かれるから。もちろん恐怖に身はすくみ、十年が経って再び祭りと向き合うことに不安は隠せない。それでも青海は目の前の、今年の稚児役である少年・有紀を守ることを自分に課して強くある。
町の者から見れば、青海は本当の男とは言えないが、しかしじゅうぶんに立派で、誇らしく、彼らしさをまっすぐに持って生きている。著者の伝えたいのはきっと、町の男達そのものである乱暴な強さではなく、青海の柔軟な強さにあるのだろう。そして、そんな青海をずっと愛し想ってきた勇作の広さも。
地方の因習という側面を取り扱うとき、いたずらに新風を吹き込み改革するか、それともばっさりと過去を切り捨てて新天地へと向かうのか、大きく二つに結末は分かれる。この話では青海も勇作も、それぞれの立場を得て、町のために生きていく。若者の地方・故郷離れが目立って久しい現在、しかし故郷を愛する若者たちもいることもまた事実。BLを読みながら、地方の活性化~なんてちょっと考えさせてしまうところが、さすが中堅・剛しいらさんだと、なんだか甚(いた)く感心してしまうのでした。
あっ。青海と勇作の恋愛面についてほとんど語っていませんね。でも、この話、すごい生活感や雑多さや祭の躍動感に満ち溢れていて、青海の心理描写もかなり現実的で、読んでいただくしか味わってもらえないなと思うので、あえて外側からの感想となりました。
青海と勇作は好き合いながらも、同性愛に寛容ではないその場所で生きることの息苦しさから、一旦は別れを選択します。この辺りの青海の気持ちは、なんて健気で愛おしい。青海の強さをとても好ましく思う反面、勇作の気持ちが、ただ青海が好きだというがむしゃらなそれしか伝わってこなかったので(それがじつは大切なことでもあるんですが)、なんとも言いようがない、というのもあるかもしれません。
でも、勇作の言葉で、これはすごく心に響いたというのがあるので、最後に引用しておきます。
「毎日海を見るように、青海だけを見てきた。
 そんな俺に、他に何を見ろって言うんだ。
 海が決してなくならないように、
 俺の心から青海が消えることなんてないんだよ」
secret

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